【不動産登記】委任状への押印 売主は実印?買主は認印?

売主の委任状には実印での押印が必要で、買主の委任状は認印でもいいのですが、改めて考えるとなんでだっけ、、? 受験生時代は根拠条文を考えずに、売主は自分の不動産がなくなるから重要な印鑑で、買主は不動産を取得するだけなので実印じゃなくていいと覚えていました。根拠となる理由は以下の条文にあります。

 

不動産登記令

代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第十八条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。
2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。

 第二項の規定は、官庁又は公署が登記の嘱託をする場合には、適用しない。
 

→1項により、司法書士が代理する場合、委任状に記名押印が必要となり、2項により、その委任状に押印した印鑑の証明書(=印鑑証明書)が必要となる。印鑑証明書の添付が必要ということは、印鑑証明書の印影と合う印鑑を押さなければなりません。つまり実印での押印が必要となります。これだけだと共同申請の場合、買主も実印が必要じゃないのか?と思ってしまいます。しかし上記18条の赤字部分に注目。法務省令で定める場合というのが以下の条文。

 

不動産登記規則

   (委任状への記名押印等の特例)

第四十九条 令第十八条第一項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 
 一 申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した委任による代理人の権限を証する情報を記載した書面(以下「委任状」という。)について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 申請人が第四十七条第三号イからホまでに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が委任状に署名した場合
 代理人によって申請する場合における代理人(委任による代理人に限る。)が復代理人の権限を証する書面に署名した場合

 

→登記申請人が委任状に署名して、かつ、以下の条文の赤字部分に当てはまらなければ、押印は不要となるみたいです。

 

不動産登記規則

 (申請書に記名押印を要しない場合)

第四十七条 令第十六条第一項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 委任による代理人が申請書に署名した場合
 申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)
 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの
(1) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)
(2) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
(3) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
(4) 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
(5) 仮登記の抹消(法第百十条前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)
(6) 合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記
 所有権の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの
 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの
 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの
 法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人
 
→(イ)(ロ)は所有権の登記名義人の規定のため関係なし。(ハ)(ニ)は所有権以外の登記名義人が識別を提供しない場合の規定のため関係なし。(ホ)は識別が発行される権利者の規定のため関係、、あり。
 
 あれ?押印いるの?そう、押印は必要なんです。問題は実印での押印が必要かどうか。実印での押印が必要かどうかは、印鑑証明書が必要となるかどうかで決まります。ここでもう一度不動産登記令18条2項を見てみます。
 
2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
 
→こちらにも例外規定がありましたね。法務省令で定める場合というのが不動産登記規則49条2項。
 
不動産登記規則
第四十九条
 
 令第十八条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 法人の代表者又は代理人が記名押印した者である場合において、その会社法人等番号を申請情報の内容としたとき。ただし、登記官が記名押印した者の印鑑に関する証明書を作成することが可能である場合に限る。
 申請人又はその代表者若しくは代理人が記名押印した委任状について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の委任状に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合
 前条第一項第四号及び第五号に掲げる場合
 復代理人によって申請する場合における代理人(委任による代理人に限る。)が復代理人の権限を証する書面に記名押印した場合
 
前条第一項第四号及び第五号に掲げる場合というのが以下48条の赤字部分。
 
不動産登記規則
(申請書に印鑑証明書の添付を要しない場合)
第四十八条 令第十六条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 法人の代表者又は代理人が記名押印した者である場合において、その会社法人等番号を申請情報の内容としたとき。ただし、登記官が記名押印した者の印鑑に関する証明書を作成することが可能である場合に限る。
 申請人又はその代表者若しくは代理人が記名押印した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合
 申請人が前条第三号ホに掲げる者に該当する場合(同号イ(6)に掲げる者に該当する場合を除く。)
 申請人が前条第三号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合(前号に掲げる場合を除く。)
 
→またまた他の条文の援用です。前条である不動産登記規則47条は先ほども登場しましたが、もう一度載せます。
 

不動産登記規則

第四十七条 
 
 申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)
 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの
(1) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)
(2) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
(3) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
(4) 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
(5) 仮登記の抹消(法第百十条前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)
(6) 合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記
 所有権の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの
 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの
 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの
 法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人
 
→不動産の買主は(イ)(ロ)(ハ)(ニ)に該当しないし、(ホ)には該当します。よって印鑑証明書の提供は不要=実印じゃなくてもいいということになります。
 
長くなりましたが以上が根拠条文です。実務においては根拠条文が大切になってきますので、しっかり押さえておきましょう。